吾妻三十三観音霊場札所巡り


こちらは近世吾妻三十三番観音札所(元禄三年以降)の札所を紹介。


それ以前は中之条誌によると中世すでに吾妻三十三番観音札所が成立していたようで、応仁の乱後荒廃していた吾妻三十三番巡礼札所が再興されたようです。その後天文以来の兵乱により中世の三十三番観音札所も廃絶したが、元禄三年横尾の吉祥院・大塚の普賢院・尻高の福蔵寺・大塚の林権左衛門らにより再興されたようです。

吾妻三十三観音を始めるきっかけ


秩父には良く行ったのですが、吾妻にも三十三観音札所があることを最近知りました。嬬恋のカラマツの丘に写真を撮りに行く途中お堂があったのですが、それを調べているなかで知りました。札所といっても御朱印があるわけでもなくまた、すでに廃寺していたり当時の跡地だったりとかなりマイナーな感じですが、せっかく訪れるのでこちらのブログに情報を残そうと思いました。


吾妻の巡礼 ~吾妻三十三番観音縁起~


 永延二年(988年)三月十五日の事、花山法皇以下十一人の高僧が坂東の聖地を巡礼なされ、群馬郡水澤寺においでになって一休みしていると、異様な姿の人物が突然現れて「私は末世まで世の人々を救いたいのだが、自分ひとりの力では到底できないことである。いま吾妻の人々を見ると心は荒んでいて、たけだけしく行跡も乱れています。このままでは皆地獄へ落ちて行くことは間違いありません。どうか皆さんのお力によってお救いください。私が吾妻への道案内をいたします。」というと十一人の僧は「衆生を済度いたすことは何処の地においても同じです。かしこまりました。」といって、同年四月十八日から吾妻の地を巡礼なされて、七日にしてその聖地をお定めになったのである。


 この異様な人は、いとまごいのとき「私は熊野権現で世の中を救うためにここに仮に姿を顕したのである。永くこの地に留まってこの地の人々を護りましょう。」という声とともに、みるみるうちに光を放って虚空をさして舞い上がってしまった。


 土地の人々は熊野権現の仰せの通り、知高熊野三社権現を建ててこれを祀ったのである。三社とは、尻髙(新宮)・大塚(本宮)・赤坂(那智)をいう。中世の知高郷は現在の高山村尻髙と中之条町名久田地区をさし尻髙を知髙と書くならわしであった。その後、元弘・建武以来、世は南北朝の動乱期に入ったため大いに乱れ、西国、坂東の巡礼を志すものは道にして殺されたり、或は監禁され剥盗に衣装・金品を奪われるなどして苦しめられ、堂宇などもことごとく荒れ果ててしまった。


 この時榛名山大房法蔵坊と林左馬之助義秀(宰相坊)の両人は三十三番霊地の再興を願い、老幼男女を引き連れて、毎年巡礼を行ったので、それより土地の人々に仏を崇ぶ心が勃然と興り遠近の国の人々までが伝え聞いて老幼男女貴賤上下袖を連ねて吾妻を訪れて巡礼をするようになった。


応仁、文明以来世は再び乱世となり盗賊、悪人等多くはびこって仏法を尊ばず、神道を崇めず、堂塔伽藍は兵火に焼かれ、盗賊の棲家となり、仏像経巻は売りつくされ各所の霊場は一面の野原と化し、訪う人も稀になって、建武より二百余年続いた吾妻巡礼も天文の初めに遂に断絶した。


(札所20番貫湯平観音堂 堂内にある資料より)


札所めぐり案内図


三十三番大塚観音堂に貼られている札所めぐり案内図
旧1番と旧2番は逆になっている場合もあるようです。
この地図だけで巡礼するのはちょっと困難かもしれません。だいたいの見当で訪れるとかなりわかりづらい場所もあり、私も1度ではたどり着けないところもありました。具体的な場所はそれぞれの札所ページに紹介していますので、訪れるときの参考にすれば迷うことなく巡礼できると思います。

吾妻三十三番観音めぐり(テキスト版)



各札所のおすすめポイントや他では紹介されていない境内の案内図など、巡礼前のお役立ち情報は各ページにて紹介しています。

札所番号 観音名 現在の札所場所 堂名 吾妻郡誌で
紹介の札所
備考
札所1番 千手観世音菩薩 東吾妻町植栗 田長堂 植栗田中堂
札所2番 十一面観世音菩薩 東吾妻町 正泉寺 さくら堂 小泉さくら谷戸 跡地あり
札所3番 馬頭観世音菩薩 東吾妻町新巻 御園観音堂 新巻みその
札所4番 聖観世音菩薩 東吾妻町泉沢 苦抜観音堂 泉沢くぬき
札所5番 如意輪観世音菩薩 東吾妻町泉沢 糀屋観音堂 泉沢
札所6番 千手観世音菩薩 東吾妻町岩井 寺沢堂 岩井
札所7番 聖観世音菩薩 東吾妻町厚田 新井堂 厚田あらゐ
札所8番 千手観世音菩薩 東吾妻町大戸 仙人岩窟 大戸仙人いはや
札所9番 馬頭観世音菩薩 東吾妻町三島 沢尻観音堂 三島大竹
札所10番 聖観世音菩薩 東吾妻町三島 大御堂 三島大御堂
札所11番 千手観世音菩薩 東吾妻町矢倉 行沢観音堂 岩下
札所12番 聖観世音菩薩 東吾妻町郷原 生馬観音堂 郷原いくま
札所13番 聖観世音菩薩 東吾妻町 顕徳寺 原町
札所14番 千手観世音菩薩 東吾妻町原町 奥堂 原町上のうらまち
札所15番 十一面観世音菩薩 中之条町山田 善福寺 車堂 山田車堂
札所16番 馬頭観世音菩薩 中之条町山田 善福寺 車堂 山田寺かいと (薬師堂?)
札所17番 聖観世音菩薩 中之条町伊勢町 林昌寺 白石沢堂 澤渡白石澤 跡地あり
 17番横 湯峰横堂 ゆみねよこ堂
札所18番 聖観世音菩薩 中之条町上沢渡 澤渡むら
札所19番 千手観世音菩薩 中之条町下沢渡 玉淵観音堂 下澤渡すがた
札所20番 馬頭観世音菩薩 中之条町四万 貫湯平観音堂 四萬はな戸
札所21番 聖観世音菩薩 中之条町四万 寺社平観音堂 四萬寺社平
札所22番 十一面観世音菩薩 中之条町五反田 馬滑観音堂 五反田まはり堂
札所23番 千手観世音菩薩 中之条町五反田 和利堂 五反田わり堂
札所24番 馬頭観世音菩薩 中之条町伊勢町 林昌寺 五反田いはさき 跡地あり
札所25番 馬頭観世音菩薩 中之条町折田 折田観音堂 折田
札所26番 聖観世音菩薩 中之条町伊勢町 林昌寺 西中之條山崎 跡地あり
札所27番 如意輪観世音菩薩 中之条町伊勢町 林昌寺 伊勢町 跡地あり
札所28番 十一面観世音菩薩 中之条町青山 青山観音堂 まるやま
札所29番 馬頭観世音菩薩 中之条町平 林昌院 百瀬堂 横尾 跡地あり
札所30番 如意輪観世音菩薩 中之条町平 林昌院 高津堂 横尾たかす 跡地あり
札所31番 聖観世音菩薩 中之条町蟻川 小池観音堂 蟻川あらいた
札所32番 千手観世音菩薩 中之条町蟻川 塩平観音堂 蟻川しほ平
札所33番 聖観世音菩薩 中之条町大塚 大塚観音堂 大塚大ほと
札所旧1番 不明 渋川市小野子 伊久保観音堂
札所旧2番 聖観世音菩薩 渋川市村上 岩間堂

吾妻三十三観音札所(跡地を含む)一覧(写真版)


吾妻札所第一番 田長堂

桜が咲く時期に訪れたい観音堂


吾妻札所第二番 桜堂(正泉寺)

さくら堂跡地も見ておきたい
吾妻札所正泉寺


吾妻札所第三番 御園観音堂

堂内の吾妻33観音札所絵図はお見逃しなく


吾妻札所第四番 苦抜堂(くぬぎ観音堂)

高台の清々しい場所です
吾妻札所4番


吾妻札所第五番 糀屋観音堂

道路を挟んで反対の石仏もおすすめ


吾妻札所第六番 長福寺 寺沢堂

吾妻太郎の五輪塔


吾妻札所第七番 浄慶寺新井堂

六地蔵さまがお出迎え


吾妻札所第八番 仙人岩窟(仙人窟)

十六羅漢ならぬ十八羅漢の石仏


吾妻札所第九番 沢尻馬頭観音堂

観音堂に小鬼が隠れています


吾妻札所第十番 唐堀大御堂

名前がない? 無名地蔵尊もあります


吾妻札所第十一番 行沢観音堂

線路横断禁止!!! どうやって行くの


吾妻札所第十二番 生馬観音堂

毎日御開帳? 聖観世音さま


吾妻札所第十三番 光原寺(顕徳寺)

見所たくさんある大きな寺院


吾妻札所第十四番 奥堂(上野うらまち)

力石はどれ?


吾妻札所第十五番 車堂(善福寺)

善光寺三尊仏が有名です


吾妻札所第十六番 寺谷戸

はたしてこれは十六番なのか


吾妻札所第十七番 白石沢堂

観音堂にはたくさんの仏像が


吾妻札所第十八番 西禅寺

西禅寺の跡地なのか?


吾妻札所第十九番 玉渕観音堂(菅田観音堂)

馬頭観音さまがたくさいいます


吾妻札所第二十番 御堂谷戸

長閑な場所にたたずんでいます


吾妻札所第二十一番 寺車平堂

堂内の十王像を覗いてください


吾妻札所第二十二番 馬王堂

高台で見晴らしの良い観音堂です


吾妻札所第二十三番 和利堂

空閑僧侶のお墓があります


吾妻札所第二十四番 法花寺 岩崎


吾妻札所第二十五番 定光寺 (折田観音堂)

堂内の彫刻や天井絵をお見逃しなく


吾妻札所第二十六番 宝満寺跡


吾妻札所第二十七番 海蔵寺跡


吾妻札所第二十八番 円通寺 青山観音堂

堂内良く見えないので御開帳で見たい


吾妻札所第二十九番 東向寺跡 桃瀬堂

とても大きな寺院です


吾妻札所第三十番 東楽寺跡 高津堂

跡地に佇む観音さま


吾妻札所第三十一番 小池観音堂 洗板堂

静寂の地にある観音堂


吾妻札所第三十二番 塩平観音堂

十王の石仏は必見


吾妻札所第三十三番 大塚観音堂(西向観音)

堂内上部に鎮座するたくさんの小さな仏像


吾妻札所旧第一番 伊久保観音堂

早く行かないと朽ちて形がなくなりそう


吾妻札所旧第二番 村上岩間堂(岩井堂)

洞窟観音もお見逃しなく


掲載情報の観音堂名・御本尊・ご詠歌については以下の書籍を参考としています。
・中之条町誌第一巻
・観音霊場三十三番札所 吾妻の巡礼 奈良秀重氏
・上州の札所めぐり しの木弘明氏

吾妻三十三番観音札所

吾妻札所旧二番 村上岩間堂(岩井堂)

岩井堂案内図 岩井堂 洞窟観音 石仏 札所情報 堂名村上岩間堂(岩井堂)寺院名峯松ぶしょう山岩間寺御本尊聖観世音菩薩御真言オン・アロリキヤ・ソワカ御詠歌昔より たれか仏と いわい堂 ゆめをさますか 峯の松かぜ縁日4月18日住所群馬県渋川市村...
吾妻三十三番観音札所

吾妻札所旧一番 伊久保観音堂(白旗観音)

伊久保観音堂のそばには百体観音の洞窟があり百番様と呼ばれているらしい。うっかりして見てくるのを忘れた。 伊久保観音堂案内図 伊久保観音堂 伊久保観音堂へは近くまで行けても道沿いからは見えないため迷いました。近くから山沿いの中に碑があるのを見...
吾妻三十三番観音札所

吾妻札所第三十三番 大塚観音堂(西向観音)

こちらの札所を訪れていたら、吾妻三十三観音札所を奈良氏が昔調べていた時期に地区長をされていた方に出逢い、お話を聞くことが出来ました。どの石塔が聞き忘れましたが、観音堂のそばにある沢を工事しているときに捨てられていたものが見つかったとのことだ...
吾妻三十三番観音札所

吾妻札所第二十九番 林昌院

林昌院は、現在29番・30番の札所となっています。 林昌院の見どころ 29番札所の御本尊「馬頭観世音」 30番札所の御本尊「如意輪観音」 達磨大師の石仏 仏足石 林昌院案内図 林昌院 林昌院の鐘楼と仏足石 達磨大師 六地蔵 第二十九番 東向...
吾妻三十三番観音札所

吾妻札所第三十番 東楽寺跡 高津堂※1

吾妻30番札所となっている林昌院情報は29番札所に掲載しています。御本尊「如意輪観音さま」は林昌院にあります。 東楽寺跡の見どころ 基礎に使われたとおもわれる石 東楽寺跡案内図 東楽寺跡 こちらの観音様は近くに住む方が建てられたものだそうで...
吾妻三十三番観音札所

吾妻札所第三十一番 小池観音堂 洗板堂※1

こちらの札所へは初めて行く場合、何も情報が無いとたどり着くのはかなり難しいです。グーグルマップから目星をつけ近くの道路から参道を探してもありません。目安は道路沿いにある馬頭観音さまです。このそばにある道からアクセスします。案内図を参考にして...